2025年9月6日 マルチリンガルライティング研究センター発足記念講演会

2025年9月6日,青山学院大学マルチリンガルライティング研究センター発足を記念して,佐々木みゆき先生(早稲田大学)をお招きし,「AIは第二言語ライティング教育をどのように変えるか?フィードバックの再検討と新たな可能性」と題してご講演いただきました。
佐々木先生は,まず「教師は何のために学習者の作文を添削するのか」そして「良い作文とは何か」という,ライティング教育において重要な問題を提起され,生成AIの導入によって学習・指導がどのように変わるかを問いかけられました。その上で,これまで十分に議論されてこなかった教育現場におけるAI活用の倫理的問題を,著作権,情報源,プライバシー,偏見・差別の4つの観点から整理されました。次に,1990年代後半以降の第二言語習得 (second language acquisition/SLA) 研究の動向を「方法論的転換 (methodological turn)」と「社会的転換 (social turn)」の側面から概観し,研究手法やアプローチの変化を明らかにされました。さらに,生態学的 (ecological) な視点から第二言語ライティングにおけるAI活用についても論じられ,学習者個人だけではなく,学習者を取り巻く環境も含め,ミクロ・メゾ・マクロの各レベルから多角的に検証することの重要性が示されました。
佐々木先生は,まず「教師は何のために学習者の作文を添削するのか」そして「良い作文とは何か」という,ライティング教育において重要な問題を提起され,生成AIの導入によって学習・指導がどのように変わるかを問いかけられました。その上で,これまで十分に議論されてこなかった教育現場におけるAI活用の倫理的問題を,著作権,情報源,プライバシー,偏見・差別の4つの観点から整理されました。次に,1990年代後半以降の第二言語習得 (second language acquisition/SLA) 研究の動向を「方法論的転換 (methodological turn)」と「社会的転換 (social turn)」の側面から概観し,研究手法やアプローチの変化を明らかにされました。さらに,生態学的 (ecological) な視点から第二言語ライティングにおけるAI活用についても論じられ,学習者個人だけではなく,学習者を取り巻く環境も含め,ミクロ・メゾ・マクロの各レベルから多角的に検証することの重要性が示されました。
講演の後半では,佐々木先生がこれまでに取り組まれてきた2つの実証研究について紹介がありました。1つ目の研究(Sasaki, Mizumoto, & Matsuda, 2024) では,機械翻訳によるフィードバックと教師によるフィードバックによって学習者の文章はどのように改善されるかについて,複雑さ(complexity)・正確さ(accuracy)・流暢さ(fluency)の観点から分析した結果が報告されました。2つ目の研究では,ChatGPTの使用経験がない日本人大学生を対象に,より良い文章を書くために個々の学習者が使用する指示文 (prompt) が時間の経過と共にどのように変化するかを質的に分析した結果が示されました。
最後に,佐々木先生は「良い文章とは何か」という問いに戻られ,ご自身が海外で体験したタクシー運転手とのEメールでのやりとりを例に,出席者とともに活発な議論が行われました。AIが提案する間違いのない(無機質な)文章が良いのか,それとも,私たちが産出する間違いを含むが意味の通じる(人間らしい)文章が良いのか,また別の視点から,読み手を考慮せずに書かれたものは果たして良い文章と評価できるのか,など様々な意見が交わされました。
佐々木先生のご講演は,21世紀のライティング指導を考える上で,多くの示唆と学びを得る大変有意義な機会となりました。
[参考文献]
Sasaki, M., Mizumoto, A., & Matsuda, P. K. (2024). Machine translation as a form of feedback on L2 writing. International Review of Applied Linguistics in Language Teaching. https://doi.org/10.1515/iral-2023-0223